ナオ ナカムラ:ふたり個展

会期:2012年6月22日(金)23日(土)24日(日) 13:00~20:00
オープニングレセプション:18:30~20:00※20:00よりASOKOにてイベント開催
イベント①:22日(金)20:00~、ASOKOにて北大路翼(俳人)による短詩レクチャー及び、パフォーマンス。どなたでもご参加いただける俳句・短歌・詩の朗読会等も予定
イベント②:24日(日)18:30~、大島嘉仁、宮嵜浩、山本篤(現代美術家)トークショー。テーマ「家族」と「アート」
会場:素人の乱12号店ASOKO
協力:天才ハイスクール!!!!
詳細:ナオ ナカムラ

この度、高円寺にあります素人の乱12号店「ナオ ナカムラ」、ASOKOでは、ふたり個展と題しまして、大島嘉仁個展「僕らはみんな生きている、生きているから笑うんだ。」、宮嵜浩個展「DON’T THINK」を2スペース同時開催いたします。

大島嘉仁は1992年生まれ、2011年に美学校で現代美術の講座を受講し、現在、立教大学社会学部に在学中です。
これまで、自らのコンプレックスや恥をさらけ出す作品など制作してきましたが、そこにいつも当然のように登場してきたのは「家族」でした。
プライベートな母親との会話など、家族との他愛もないコミュニケーションをありのままに映しだす大島の映像作品は、まるでホームビデオのようです。
それは、「発表」されることによって、見る者に大島のプライベートを覗き見しているような妙な気分を生み出します。
大島は、「家族の風景は平和の象徴であり、家族平和は社会平和である」と考えています。昨年3月11日に起きた大震災以降、その考えは私たち多くの日本人にとって、とてもリアリティのあるものになりました。

「ほのぼの系」や「顔2.0」は、大島と母親のコミュニケーションを映像に記録した作品です。大島は「僕にとって平和の象徴は母の笑顔だ。この笑顔をみるとすこしあたたかくなる。完全な平和はない、少しの平和の積み重ねがあるだけ。この映像で少しの平和な気持ちを感じてほしい」と言っています。見る者を気恥ずかしくさせつつも、彼にとってその映像は、愛と平和に満ちたユートピアが映し出されたものなのです。
「Indirect Massage」は、駅に設置された監視カメラに向かって大島が母親に向けてメッセージを送った作品です。「駅は死にゆく場所である。そこで、命を生み出す母親という存在にむけ、メッセージを送った」と大島は言います。
大島にとって作品の制作は、家族とのコミュニケーション手段の一つです。しかし裏を返せば、家族の存在こそが彼の制作の原動力なのです。

本展覧会のタイトルになっている『僕らはみんな生きている、生きているから笑うんだ。』は大島にとって、平和の風景そのものを表現している唱歌の一節です。しかし展覧会では、「心の中だけでそんな社会になることを望んでいる。そんな自分に嫌気が差す。葛藤する。」大島の「平和」への理想と現実、そのもがきが明らかになるはずです。この機会にどうぞご覧ください。

また、24日のクロージングイベントには、ゲストといたしまして現代美術家の山本篤氏をお招きし、「家族」と「アート」をテーマにトークショーを開催いたします。

山本篤:現代美術家。2003年多摩美術大学絵画学科油画専攻卒業。自身や家族を出演者として用い、泣きや笑い、生や死など中毒性のある映像を多数発表。過去の展覧会に「OFFSITE2008 相田ちひろ/山本篤」(2009/横浜美術館)や「時間泥棒 いつもより長い夢」(2012/Art Center Ongoing)などがある。7月5日「黄金町芸術学校」にゲストとして出演予定

宮嵜浩は大阪府出身、立命館大学理工学部卒業。
ストリートダンスやバンド活動、2003年~2010年にかけての26か国への旅、そして小学校での教職活動(2011年退職)など、バラエティに富んだ体験を経て、2011年に美学校で現代美術を学びました。
そんな行動派の宮嵜の作品に通底しているのは、「まず、考えずに感じること」という姿勢です。それは、「面白いと感じたことが制作のきっかけとなり、その時、道徳性を考えていない」という宮嵜が持つ、素直な吸収力とも繋がるものです。特に宮嵜は道徳性が生む表現の自粛に対して強い疑問を抱いてきました。それよりもまずは興味が先走ること。その姿勢によってこそ、ものごとの本質を明らかに出来ると信じているのです。

映像作品「DON’T THINK」は、ケミカルブラザーズの楽曲「DON’T THINK」にインスパイアされて生まれた作品です。宮嵜はこの楽曲に「調和する」と自らが感じたさまざまな映像をミックスします。その多くは惨劇や暴力的な映像です。
道徳性を排除し、自身の素直な感情に真っ向から向きあったこの作品は、まるで惨劇のエンターテイメントのような映像です。
それは、イメージが実体験を凌駕するような今日の情報化社会において、メディア越しに非日常的な現実を知りながらも、見るに耐えないと「悲劇の蚊帳の外」にいつづける私たちに、リアルとアンリアルを巡る身近な疑問を投げかけています。
宮嵜はこの作品について「不謹慎として押し殺した表現が必ずしも追悼の最高表現ではない。不謹慎であろうとも自身の感覚を人間の感覚の一部として生み出すことで作り上げられた『DON’T THINK』は、音楽ライブの非日常性と惨劇の非日常性を一致させる追悼の試みである」と考え、さらに「戦争が光の祭典のようだ」と語っています。屋上でDJが曲をつなぐ中、空に祝祭の花火とも惨劇の戦火とも見える閃光が飛び交う、アンリ・サラの映像作品『入り混じる行為』(2003)を彷彿とさせるようなこの発言は、宮嵜が「DON’T THINK」によって挑戦するイメージと音の組み合わせ、そして道徳性を超えた感覚的な美意識の提案を象徴しています。

本展覧会タイトル「DON’T THINK」は、ブルース・リーの名台詞「DON’T THINK,FEEL」に由来し、また宮嵜自身の「考えずに感じる」制作態度に由来しています。

エロ、生命、言葉、秩序などを感覚で「解体・再構築」し、何が現実で非現実か、見えづらくなっている今日の世界を宮嵜は新たに創造し直そうとしているのかもしれません。この機会にどうぞご覧ください。

また、22日のオープニングイベントには、ゲストといたしまして俳人の北大路翼氏をお迎えし、短詩レクチャー及び、パフォーマンスを開催いたします。俳句・短歌・詩の朗読会等も予定しておりますので是非ご参加ください。

北大路翼:俳人。小学校のころ種田山頭火の本をきっかけに俳句をはじめる。北大路翼氏と石丸元章氏による、30000句を超える5-7-5で描く、超ド級俳句集『新宿歌舞伎町2012 句集/嘔吐 』発売予定 

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